カウンセラーより皆様へ

学校の先生、お子さんは発達障害かもしれないと親に言って

発達障害という言葉は、ここ20年くらいで日常的に聞かれる言葉になってきました。

でも、「あの人、発達障害だよね」と、言っちゃいけないという雰囲気が、世間にはまだあるように思います。明るく楽しい発達障害というイメージにはなっていないような気がします。

自分は、スクールカウンセラーとして23年間、学校で働いていました。先生はこの子は他の子と違うなと思っていても、それを親に言うことは殆どないと思いました。
「自分は専門家でないからうかつなことは言えない」、「親に言うと自分との関係が悪くなるかもしれない」、「こういうタイプの子はどこにでもいる」と考えます。
先生が子どものことを親に言わない一番の理由は、親との関係を壊したくしたくないからだと思います。

先生の気持ちは、当たり前と言えば、当たり前だと思います。障害という言葉の響きはあまりいいとは言えません。
どこか欠陥があるような、どこか特別なような、そんな印象があると思います。専門家と違い、一般の人は、障害は未知の世界です。
特に発達障害という言葉がない時代の人たちは、自分の子が障害だと言われたら、相手に不信感を持つと思います。

でも自分は、先生に、「お子さんは発達障害かもしれない」と親に言って欲しいし、言わなければならないと思います。
先生は、親よりも長い時間、子どもたちと一緒にいます。集団の中のその子を見ています。
先生はその子を他の子と比べることが出来るのです。
親は自分の子が発達障害だと分からないことが多いと思います。うちの子は何かが、どこかが違う、と思っても、認めたくない気持ちが働きます。

障害は生まれつきの個性で、病気と違って一生なくなることはありません。例え障害がなくても、私たちは生まれつきの個性があります。背の高さ、頭の良し悪し、運動能力、病気のなり易さなども生まれつきの個性です。生まれつきの個性は一生変わりません。

発達障害の人に適した職業は沢山あります。芸術、芸能、スポーツ、研究、ITなど、個性に合う職業に、優れた力を発揮します。
しかし人と上手く付き合うことが出来ないと、社会で生きるのは難しくなります。発達障害の人は、コミュニケーションが苦手なので、対人関係で苦しむことが多いのです。

人と上手く付き合う力を身に付けるためには、できるだけ早期から療育などで社会的スキルを身に付けることが必要です。子どもの年齢が早ければ早いほど練習が身に付きます。
親も発達障害の個性を理解することが出来ます。発達障害を理解すれば、子どもを無駄に叱ることが少なくなります。
親子関係が良好に保てます。一方、発見が遅ければ遅いほど、人付き合いの苦手さゆえに他人から、心を深く傷つけられることが多くなります。

だからこそ先生、勇気をだして、お子さんは発達障害かもしれないと親に言って下さい。
親との関係が悪くなっても、親は先生の言葉を忘れません。心に先生の言葉が刻みこまれるのです。先生の言葉をその時は絶対認めなくても、必ずどこかの時点で病院を受診するはずです。お子さんが集団の中で上手くいかないことが多くなるからです。

たとえ先生から何も言われなくても、親は、どこかでこの子は何か違うと気付いているのではないでしょうか。
その気付きを大切にして下さい。そして出来るだけ早く発達障害専門の病院に連れて行って下さい。連れていった結果が発達障害でなくてもいいのです。
しかし発達障害だと分かれば、親は、この先、子どもに何をしたらいいのかを考えることが出来ます。

発達障害児の扱い方クイズ

<問題>
あなたは用があって手が離せません。でも夕飯を作る材料が必要です。
あなたの子どものA君(中1)にスーパーで買い物をしてくれるように頼みました。
A君は発達障害です。A君は、あなたの頼みにNO(嫌だ)と言いました。
あなたは、A君をどうしたら買い物に行かせることができるでしょうか?あなたがいつもやっているやり方を選んでください。

1 お母さんは今、用があって手が離せないの。だから買い物に行けないの。夕飯の材料を買わないと今晩のご飯が作れないのよ。だから悪いけど行って来て。

2 買い物に行かないとお小遣いはあげません。行けばあげます。行くか行かないか、どっちにしますか?

 

1を選ぶと、A君とのやり取りは以下のようになると思います。

A君  じゃあ、夕飯を食べなきゃいい。

あなた 何言ってるの。夕飯を作らないとみんなお腹がすくでしょ。

A君  出前とればいいじゃん。

あなた 何言ってるの?スーパーに行きたくないからそういうことを言うんでしょ。お母さんはいつもあなたのために色々やってあげているじゃない。なんで、お母さんの頼みをきけないの?

A君   お母さんが勝手にやっているんでしょ。僕頼んでないよ。

ここまでくると、あなたは怒りだし、A君は「わけわかんないよ」と言ってどこかに行く。

2を選ぶと、A君とのやり取りは以下のようになると思います。

あなた   スーパーに行くか、行かないか、どっちにしますか?

A君    スーパーに行く。

そしてA君が買い物から戻った時、あなたはA君に例えばA君の好きな食べ物(お菓子でも、ジュースでも、A君が好きな物ならなんでもいい)を渡してこう言います。スーパーに行ったから、ご褒美をあげます。するとA君は喜び、次にA君をスーパーに行かせるのは楽になります。

<解答>
発達障害の子と発達障害の無い子の扱い方は、全く違います。
1の方法ですが、A君には、あなたの気持ちが理解できないのです。

A君は、スーパーに行きたくないから、スーパーに行かないと正直に言っただけです。
ありのままの自分の気持ちを言っているのです。そして、あなたが説明すればするほど、A君は混乱してきます。
あなたがいつもA君のお世話をしてあげていると言っても、A君にとっては、あなたがやりたいからやっているしか考えることができません。
A君はあなたにやってと頼んではいないからです。A君が可愛いからやっているというあなたの気持ちは分かりません。

2の方法は、あなたが言いたくない言葉かもしれません。
しかし発達障害の子にとっては、これほど分かり易い言い方はないのです。

スーパーに行けば、お小遣いが貰える。行かなければ貰えない。どっちが自分にとって好ましいかの問題だからです。A君にとっては、お小遣いを貰う方が大事です。だから簡単にスーパーに行くという選択をします。そして買い物をして帰ると、A君の好きな物まで貰えたのです。
A君にとってこれほど嬉しいことはありません。またスーパーに買い物に行くと、ご褒美が貰えるかもしれないと考えます。
次にA君に買い物を頼むと、割と簡単に引き受けると思います。
ただし、毎回A君にご褒美を用意する必要があります。前回、ご褒美を貰えたのに、今回、貰えない理由がA君には分からないからです。だからあげるのは、毎回あげることが苦にならない小さなご褒美にしましょう。
あなたは、いつもA君のお世話をしているのだから、この位するのは当たり前だという考えは捨てなければなりません。
あなたが考えるのは、A君をスーパーに行かせるにはどうしたらいいか?だけなのです。発達障碍児が理解できる言い方を工夫する必要があります。

逆に発達障害のない子は、あなたの気持ちが分かるので、1の言葉がけで十分です。お母さんは、自分のことを思ってくれることを分かっています。だから2の言い方をすると逆に自分を物で釣るのかと怒りだします。心が傷つくのです。

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